野草とともに
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おけら Atracylodes japonica キク科 Compositae
“山でうまいのはおけらにととき”と俚謡 でうたわれているがとときはキキョウ科のつ りがねにんじん(Adenophora triphylla var. japonica)であることは,かなり以前から知 っていた。
しかし,おけらのほうは,それが キク科に属することは知っていたが,どのよ うな植物であるおか,さっぱり分からなかっ。
いっときテレビのコマーシャルソングに “おけら何故泣くあんよが寒い”と歌われて いたが,このコオロギ科の昆虫と何か関係で もあるのか,などとも思いながら,山歩きな どでもずいぶん気をつけていたが,とんと出 会うこともなかった。
ところが“灯台下暗し” とでもいうのか,ある人から“薬大の薬草園 に植わっています”と教えられ,丁度花期に 画いたのがこのスケッチ(1989年7月2 0日)である。
これでも分かるが,総苞下の 2列に並ぶ,魚骨状の苞葉があり,その頭花 の様子が面白いので,ドライフラワーにして楽しむ人もあるという。私はまだ試してみ たことはないが,4,5月頃の若芽が,とく に美味であるとされている。おけらはこのようにうまい山草であるだけではなく,薬用植物としても使われていて,この根を洗って,そのまま乾燥したものが蒼朮,皮を剥いで乾燥したものが白朮として,芳香性の健胃剤として使われている。また,これを粉にして,山椒,防風,桔梗,蜜柑皮,肉桂皮などに加えて,正月用の屠蘇散にも使われる。
おけらは昔から邪気を払うと信じられ,京都祗園の八坂神社では,大晦日の夜に火をたき,おけらをくべる行事がおこなわれている。
この火を火縄に移して持って帰り,元日のお雑煮をたく種火に用いると,一年間を息災に過ごすことができると信じられ,昔から“おけら参り”として親しまれている。大晦日の夜の町を,火縄をくるくる廻しながら,歩む人々の姿は,本当に京都にふさわしい風物詩として,何時までも続いて欲しいと思うのである。
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