野草とともに

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おとめゆり(ひめさゆり) Lilium rubellum ユリ科 Liliaceae

おとめゆり(ひめさゆり) Lilium rubellum ユリ科 Liliaceae ささゆり(Lilium japonicum)は日本特産 の野生ゆりで万葉集でゆりと詠まれているの はたいていこのささゆりだといわれている。
このゆりのファンはなかなか多くて,大阪府 箕面市には“ささゆりの会”といのがあって, 北摂のあちこちの自生地の保護につとめてい る。私も、奈良県笠置山の近くで,関西線の 線路沿いで出会ったが,これが野生かと疑う ほど優雅な姿で,しばし立ち去り難い風情で あった。

奈良市にある率川神社では,毎年6 月17日に古く,大宝年間(8世紀)から続 いている三枝祭(通称ゆり祭)がある。神前 の酒樽はささゆりで飾られ,奉納される神楽 を舞う,ゆり姫とよばれる巫女達は、ささゆ りの冠をかぶり、ささゆりをかざして舞うと いう。しかもこのささゆりも古式にのっとっ て,三輪山から野生のものをとってくる。表 記のおとめゆり(ひめさゆり)Liliumrebell umは,このささゆりをそのまま小型にした姿 である。この両者は,どの図鑑でも並んで載 せられていて,お互いの近縁性を示している。 ささゆりは関東方面では比較的少ないが,関 西では割合と多く,二,三年前に見たNHKテレ ビで和歌山県の中辺路沿いの群落をうつして いたが,大いに心強く思ったものである。

一方,おとめゆりのほうは,山形,福島など東北に多く,やや山深いところに自生しているといわれている。
このスケッチは1991年5月26日に画いている。これは野生のものではなくて,購入した苗から咲かせたものである。
その年の3月に清荒神の参道で花の苗を販売していた老人から買ったものである。この老人からは,ゆり科だけでもすかしゆり,ひめゆり,てっぽうゆりなどを購入したが,どれも美しい花を咲かせてくれて,大いに楽しませてくれた。ここ暫く姿を見ないのが残念である。
ささゆり(笹百合)は葉が笹に似ているからの命名というが,別名にさゆりがある。広辞苑で調べてみると,さは接頭語で漢字の“小”、または“早”があてられれている。
したがって,さゆりは小百合または早百合となる。おとめゆり(乙女百合)の別名はひめさゆり(姫小(早)百合)とされているが,私の持っている数冊の図鑑では,丁度半々位でひめさゆりのほうを本名としている。
姫は一般に小型を意味している。乙女は,以前,女学校の校歌などでもよく出てきたが,最近では,それほどでもない。しかし乙女にしろ,小百合にしろ,早百合にしろ,清純というイメージを与えて悪くないと思っている。
この号は記念号で私のスケッチもカラーになるということが,私にはとても嬉しい。
それはおとめゆりの花色を図鑑などで見ると,淡紅色や,うすいピンク色というのが多い。
しかし私にはそれだけでは,何か物足りない。“優雅”とか“匂うような”とか欲しいところである。その点カラーで出して貰えれば,それは一目瞭然,この色を出すのに苦労したことは一遍に吹きとんでしまうのである。
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