野草とともに

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かたくり Erythronium japonicum ユリ科 Liliaceae

かたくり Erythronium japonicum ユリ科 Liliaceae 日本人は昔からかたくりの花をこよなく愛 してきた。
かたくり(片栗)は万葉集の大伴 家持の歌に出てくる古名の「堅香子」に百合 をつけて「かたかごゆり」が転じて「かたこ ゆり」になり,ついに「かたくり」となった といわれている。  

このスケッチは1990年5月6日に画かれているが,当時,私のまわりには野生のかたくりを見たいという人が沢山いた。
私は研究上の 必要から三重県の藤原岳にしばしば出掛けて いた。この日,藤原岳の七合目で満開のかた くりの群落に出会って,本当に感激した。 この時,群落の近くで,やまぶきそうやにり んそうやみのこばいもも見たと記録している。 その後,かたくりの群落には,伊吹の北尾根, 兵庫県の柏原の近く,大阪府の高槻市の奥な どで出会っている。

私は1960年代の前半にドイツに留学してい るが,当時は野草に心ひかれることなく,あ まり知識もなかった。
それでも暇があれば, あちこち歩き廻っていたが,かたくりのような花に出会ったこともなく,漠然と,こんな 日本的な優雅な花はヨーロッパにはないと決 め込んでいた。
ところがこの度,かたくりに ついて書くにあたって調べてみると,実に日本かたくりによく似たErythronium denscantisという植物がヨーロッパにあって,これが日本かたくりが現在の学名になるのに大きな役割を果たしていることがわかった。
はじめ日本かたくりは,このE. denscantis と同一種と考えられた。当然,日本かたくりにE. denscantisが与えられたのである。ところが1875年にイギリスのBakerは日本かたくりは  同一種ではなくて,その変種であるとした。

しかしそれより前の1864年にベルギーの分類学者Decaisne(1807~1882)が日本かたくりはE.denscantis ではなくて,それは Erythronium japonicum であると発表していたことが  わかった。現在,かたくりには E. Japonicum Decne が使われている。DecneはDecaisne のラテン語表記である。
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