野草とともに

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にしきごろも

にしきごろも にしきごろも(Ajuga yezoensis)はゴー ルデンウィークの頃,丘陵地の林内でしばし ば見かけるしそ科の草本植物である。
この図 はフィールドノートによると1999年5月 3日六甲山高山植物園横の林内で見付けたと ある。属名のAjuga は“対をなさない”とい う意味であり,花冠の上唇と下唇がいちじる しく不揃いであることからきているらしいが, この花もよくその特徴をあらわしている。にしきごろもという平安貴族の衣装を連想 させる名前から,すぐに,同属のじゅうにひ とえ(Ajuga nipponensis)を思い出す。 これについては,私はかつてとりあげたこと があるが,これとても平安時代の優雅な官女 の宮廷生活を彷彿させる,とても好もしい良 い名前だと思っている。 “にしき”にこだわりがでてきたので,広辞 苑をひいてみると「華麗な模様を織り出した 厚地の絹織物」とある。

この草は決して華麗をはいえないで,むしろ, 重厚な美しさをもっており,とくに葉の裏面 の薄紫色と,その葉脈の紫紅色に,にしきと 命名させた所以があると思っている。
草の名 前には命名者の気まぐれが感じられて,どうしても許せないというものもあるが,にしきごろもは私には平安時代を想起させる点だけをとってみても,とてもよい名前だと思っている。
同属で多くの人が知っているぢごくのかまのふた(きらんそう)(Ajuga decumbens)はじごくのかまという人の意表をつく命名ではあるが,滑稽味が感じられて面白い命名だと思う。
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