野草とともに
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ふき Petasites japonicum キク科 Compositae
少し前に本誌にせつぶんそうのことを書い たことがある。
以前は私の山野草探訪は神戸 市の西部にあるのゆきわりそう(みすみそう) ではじまったが,それも現在では絶滅の一歩 手前まで追いつめられ,なかなか見ることが 難しくなった。最近は,二月の下十から三月 上十にかけてのせつぶんそうの探訪にはじま る。
丹波篠山の奥にある丹南町下でバスを降りるとせつぶんそうの自生地は近い。せつぶ んそうが咲いている時に,何時も見られるの がせりばおうれんであり,運がよければゆき わりいちげも見られる。あずまいちげは若干 遅い。農家の庭先にはふくじゅそうが春の到 来を告げている。おおいぬのふぐりも,ちら ほら咲きはじめかけている。それでも,一面 は,まだ枯れ草が多く,大山欺(追手神社) の森蔭には残雪が見られることもある。
そん な中にの畔道の斜面にの(花莖)が,へばり つくようにして出ている。このスケッチは, あの阪神大震災のあった年(1995)の3月7日の ものである。このみずみずしいほどのに,春 の息吹きを強く感じるのである。しかもこれ は美しいだけでなく,よく洗って佃煮は天麩 羅にすれば,一寸ほろ苦いとはいえ,とても 美味しい。初夏に出廻る蕗(葉柄)よりも野趣があって,こちらを好む人もなかなか多い。
蕗の薹には雄株と雌株があって,ここにスケッチしたものは雄株である。この丹南町の隣町,山南町は,江戸時代からの丹波黄蓮の産地であり,せりばおうれんはそれが,丹南町へ逸出してきたものであろう。山南町は“漢方の里”ともよばれ,薬草栽培農家が多くて,薬草薬樹公園が町の近くに整備されている。
ふきの属名のPetasitesはギリシャ語のpetasos(つばの広い帽子)からきていて,子供の頭にできた,できものの治療に,この葉を帽子のようにのせたことからきているという。
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