野草とともに
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しはいすみれ Violea Violacea スミレ科 Violaceae
春,山野を歩きまわっていると,いろいろなすみれに出会うが,すみれは,所謂,すみれ 色(濃紫色)から,白色,黄色,紅紫色など, いろいろな花色のものがあり,それに分類も難 しそうなので,誰しも戸惑いを感ずるものであ る。
私はかつてこのシリーズでおおばきすみれ Viola brevistipulata(Vol.40 No.3, 1995) ですみれ類を大きく,地上茎のある有茎種と, 地上茎のない無茎種に分類すると,同定する時 に非常に有効であると述べた。
そしておおばき すみれは有茎種に属するとした。
今回のしはいすみれViola violaceaは,この スケッチからも分かるように,花も葉も根生し ており,無茎種ということが分かる。これには 紫背菫の漢字があてられている。
学名の種小名 のviolaceus(a, um)は“菫色の”という意味 であるが,これは花の色を表しているのではな くて,葉の裏側の色を表していることが分かる。
このスケッチは北摂の能勢妙見に行った時に 画いたものだが,私が紫背菫を見た,比叡山, 藤原丘,六甲山,賤ケ丘など,いずれも,麓や 里よりもこれらの山の中腹に近いところで見て いる。紫背菫はそんなに稀なものではないが, その端正な花姿といい,その葉の落ち着いた雰 囲気といい,歌人土屋文明も和歌「紫背すみれ 斑の個々に異なるも,心をひけば歩みをとどむ」(意味:しはいすみれの葉の変異に心をひか れ,思わず立ち止まってしまう)に詠んでいるように,なかなかの名花の一つだと思っている。
フィールドノートで調べてみると,1994年4月8日(賤ケ丘)では,この日,他にいかりそう, じろぼうえんごさく,とうごくさばのおを見たと記しているし,1994年4月19日(能勢妙見)で は,いちりんそう,せんぼんやりの春型,葉の切れこみに特徴のあるひごすみれ,野生のしゅん らんの数株を見たと書いている。いずれにしろ,この紫背菫の咲く項,山野にくり出せば,素晴 らしい,春や初夏の草花にふれることができるのは確かである。
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