野草とともに
- ぼたんづる
- おおばこ
-
-
野草の一覧へ
めまつよいぐさ Oenothera biennis アカバナ科 Onagraceae
私の住んでいるマンションの前を白瀬川という奥床しい名前の川が流れている。
白瀬川 は逆瀬川の支流で,逆瀬川は武庫川の支流で ある。昭和13年(1938)7月5日のあの阪神大 水害の時の山津波に,ひどくやられたという 記録がある。
この白瀬川の河川敷におおまつ よいぐさとめまつよいぐさが,夏の夕方に仲 良く黄色の花を咲かせている。これらはいずれもアメリカ大陸原産の帰化植物で,アカバ ナ科に属しており,植物図鑑に必ず「荒地に 自生している」と書いてある。
私はこのマン ションにもう20年も住んでいるが,毎年これらが生えてくるので,この河川敷は本質的に 荒地のままに推移してきたのかと苦笑を禁じ 得ない。
めまつよいぐさはおおまつよいぐさに似て いるが,花が小さいので雌待宵草と命名され たという。め(雌)が和名の命名に使われて いるが,これらは雌松や雌日芝に使ったのと 同じ感覚からであろう。こんな場合,これよりもよく使われているがひめ(姫)であるが,実に 170もの草に姫が使われている。
しかし,めまつよいぐさをひめまつよいぐさといいかえてみれば,この名がこの草に適していないことが直感される。属名の Oenotheraは,この仲間の根がぶどう酒の添加剤に使われておりOinos(ぶどう酒)とthera(飲む)を組み合わせて命名されたという説がある(『世界の植物』)。また種小名のbiennisはこの草が 2年草であることを示しているが,この属の他のたいていのものも 2年草であるので,この草の特徴をとくにあらわしているとはいえない。
私は最近,健康のために毎夕,白瀬川の岸を散歩しているが,暗闇せまる中,おおまつよいぐさもめまつよいぐさも,生い茂るくずやじゅずだまやせいたかあわだちそうの中で,蝋燭をとぼしたように黄白色にボッと浮かんでいるのは,なかなか風情がある。
- ぼたんづる
- おおばこ
-
-
野草の一覧へ