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みつがしわ Menyanthes trifoliata ミツガシワ科 Menyanthaceae
私がみつがしわにはじめて気がついたのは このスケッチをした1990年4月2日(神戸薬科 大学薬草園)の数年前,志賀高原の下の小池 のほとりであった。
その時,この白い花の朝 日の中でキラキラ輝くほどの美しさに驚嘆した。 同時に,この酸性の強い池に生育することが できる, この植物の生命力にも驚いた。
みつがしわは古い植物で,ユーラシア大陸 に広く分布している。ドイツの植物図鑑にも, 全く同じ学名をもつ植物が記載されている。 その古さは,その種子の化石が日本でも上部 漸新世(3500万年~2500万年前)や沖積世(2 万年前から)の土壌の中から発見されている ことからもわかる。
このように古い植物が, ユーラシア大陸に広く分布しているというこ とと,古くから薬(苦味健胃薬)として西洋 でも東洋でも用いられているということは興 味深い。
属名 Menyanthes は, ギリシアの哲学者 Theophrastus(B.C372~287,アルキメデス の弟子 )が,直接,この草に命名したとの ことだが,このことは,当時既にこの草が薬草として用いられていたことを示唆している。
牧野はanthes(anthos)は花であり,Meny-はギリシア語のmenyein(表現する)から来ていて総状花序の花が徐々に展開することに因んでいるとしている。 種小名のtrifoliatus(a,um)は,三葉のという意味である。
和名のみつがしわには 「 三つ槲 」 が当てられていて三枚の小葉がかしわの葉に似ていることからつけられたとされている。
この花の美しさについて述べられることは少ないが,我が国でも愛好者は裁培して楽しんでいるし,ドイツの植物図鑑にも“この草を見る時,人は直ちにこの草の特別美しい花に気付く”と書いてある。
みつがしわは,中国,日本ではその乾燥葉が睡菜葉と称されて苦味健胃薬として用いられている。ミツガシワ科は比較的近年にリンドウ科から独立したが,この草の苦味成分はりんどうやせんぶりの苦味成分にその構造が似ている。
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