野草とともに
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しゃが Iris japonica アヤメ科 Iridaceae
今年の5月4日,京都の鞍馬寺から険しい坂道を貴船神社まで下ったが,両側の斜面にしゃがの群落がいくつもあり,丁度満開で,その美しさは私がこれまで経験しなかったほど美しかった。
しゃがは私が小学生の頃から知っていた数少ない植物の一つで,兄と一緒に箕面へ昆虫採集に行った時,兄がその名を教えてくれた。
しゃがには射干,●莪の文字があてられているが,私は,むしろ,これらの音読で,しゃがになったのではないかと思っている。
属名のIrisはギリシャ神話にでてくる虹の女神のイリスからとられたものであり,Irisはあやめ属の植物の属名になっている。1775年8月から1年 4カ月日本に滞在したThunberg(1743~1838)がしゃがにIris japonicaの学名を与えた。種小名をjaponicaにしたのは,彼が日本ではじめてしゃがに接し,“日本の”という名をつけたのであろう。
確かに,ドイツや世界植物図鑑にはI. japonicaの記載はない。ただ,中国本草図録(全10巻,中4巻p.223)には写真とともに記載があり,蝴蝶花とよばれ全草を洗浄,乾燥したものは●竹根と称し,胃のもたれ,腹痛などに用いるとある。そして,とくに日本産あるいは日本由来ということにはふれられていないし,中国南部に広く分布していると書かれている。
このスケッチは,神戸薬大在任中の1998年4月18日に,薬草園に植えられていたものを画いたものであるが,その美しさに感激して画いたものではなかったので,なんとなく弱々しい。それに当時は,これと同属のひめしゃが(I. gracilipes)に熱をあげていたので,少し,しゃがに対する見方が辛かったようである。今,私の持っている本を調べてみると,しゃがを愛する人達が庭に栽培したり,俳句歳時記(角川書店,1974)に採用されているのを知って,しゃがを軽く見過ぎていて汗顔の至りである。しゃがに詫びる気で歳時記からの一句を最後に記す。
“一面の●莪にさざめく洩日かな”
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