野草とともに

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ひめむかしよもぎ Erigeron canadensis キク科 Compositae

ひめむかしよもぎ Erigeron canadensis キク科 Compositae ひめむかしよもぎのよもぎにこだわって調べてみるとよもぎ属(Artemisia属)とむかしよもぎ属(Erigeron属)があって,この草はむかしよもぎ属に属している。従ってこの草の考察の標準としてはおとこよもぎ(Artemisia japonica)ではなくてえぞむかしよもぎ(Erigeron acer)ということになる。そうすればひめの意味がわかってくる。即ちえぞむかしよもぎの頭花は径15mmもあるのに,この花では僅かに3mmで5分の 1に過ぎない。ひめの所以である。
ひめむかしよもぎがカナダ原産であることは,その種小名canadensisから明らかであるが,これが日本に入ってきたのは意外に早く,明治初年に入ってきており,鉄道の建設とともに全国にひろがり,鉄道草とよばれたことがあると伝えられている。
せいたかあわだちそう(Solidago altissima)が猛威を振るう前には,このひめむかしよもぎが自然破壊の指標にされたことがあり,その頃には,自然環境に関する新聞記事などで,屡しば々しば,登場していた。それで,この名前を聞けば懐しく感ずるほどである。私はめっきり見なくなったこの草を昨年の暮れ,近所を流れる白瀬川の岸辺で見掛けて,ある種の感慨を覚えたものである。
Erigeron属には,多くの人が知っているはるじおん(E. philadelphicus)があるが,これは北米原産で,日本では戦前は関東で,戦後は関西で広がった。
我が国原産と思われるものにはえぞむかしよもぎ(E. acer),むかしよもぎ(E. acer. var. kamtschaticus),ほそばむかしよもぎ(E. acer. var. linearitolicus),ひろはむかしよもぎ(E. acer. var. amplifolius)がある。また,あずまぎく(E. thunbergii),みやまあずまぎく(E. thunbergii ssp. glabratus)などは,いずれも種小名にThunberg(1743~1828)の名前が見られ,江戸中期には既に日本にあったことが推定される。またみやまのぎく(E.miyabeanus)の種小名は北大名誉教授の宮部金吾(1860~1951)のことである。
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