野草とともに
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キンバラリア・ムラリス Cymbala-ria muralis ゴマノハグサ科 Scrophulariaceae
この草をはじめて見てからもう30年位になるだろうか。桜も散りはじめた4月のある日,私は宝塚ホテルの方に散歩に出掛けたところ,ホテルを囲む石垣のところどころにこの草が可憐な花をつけて匐枝を伸ばしながら群がり咲いているのを見つけた。花は小型ではあるがむらさきさぎごけに色,形とも似ている印象を与えるので,これはきっとゴマノハグサ科に属する植物と推定した。また,葉もなかなかいい形をしていることに気づいた。そこで家に帰って,ありったけの図鑑を調べたが,日本産のゴマノハグサ科の植物でこれに該当するものはないことがわかった。私は途方にくれて,少しイライラしながら,ふと,ドイツの図鑑の Der Kosmos-pflanzenfu¨hrer(コスモス―植物手引き)を調べることを思いつきScrophulariaceaeのところで Cymbalaria mularisを見つけ出した。この時は,この草を同定することができて大へん嬉しかった。この草がドイツ語でZimbelkraut(シンバル草)とよばれていることを知った。この草の属名のCymbalaria=das Zymbal(シンバル)を意味していて,このスケッチでもわかるように,その葉の形に由来している。また,種小名のmuralis(e)は Mauer(石垣,城壁)にwachsend(生える)という意味である。そこでDer Kosmosで述べられているが,この植物の原産地は地中海地域であり,ドイツへは観賞植物として導入されたが,今や野生化している。私はこの草をはじめて宝塚ホテルの石垣で見たが,その後,私の住むマンションの石垣の一部にも生えてきており,私の通っていた薬科大学の裏門から薬草園へ至る路傍の石垣にも生え,少なくとも阪神地域ではかなりの地域で生えている。
この草の和名はまだ定着していないようだが,私の考えでは,この草の学名を考慮にいれてシンバルかずらを提唱したい。
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