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なんばんぎせる Aegineta Indica
![なんばんぎせる Aegineta Indica](/images/yasou/y003.jpg)
なんばんぎせるは,はまうつぼ科に属する 1年生草本でいね科の植物とくにすすき (Miscanthus sinensis)に寄生し,8月か ら10月にかけて赤い頭花をつける。寄生植 物であるため,普通の草とはかなり異なった 姿をしている。
奈良県の葛城山のすすき原の おおなんばんぎせる(A.sinensis)は有名で ある。 この草は万葉集の昔には“想い草”とよばれ ていた。一見,物思いにふけっているように も見えて,よい名前だとは思うのだが,この 古い名前は“なんばんぎせる”に変ってしま った。万葉集は8世紀半ば頃迄の歌を収録し ているのであるし,“なんばんぎせる”とい う名前は勿論,タバコの日本渡来(16世紀) 以後の命名である。 私自身はこの草の姿を見て“なんばんぎせる” という名前はなかなかしゃれた名前で,この 葉を欠いている茎の部分を含めて,マドロス パイプを連想させて,うまい命名だと思って いる。
“想い草”の方は,日本人の心情をよ くあらわしているとはいえ,あまりにも文学 的であるように思うのである。
これに関連して思い出すのは,きく科の植 物で矢張り8月から10月に花をつけるがんくびそう(Carpesium divaricatum)である。
この花を知っている人は,まさしくキセルの雁首をこの花にみて,ニンマリとするのである。それほどにうまい命名だと私は思っている。しかし雁首はキセルの一部であって全体ではない。
がんくびそうは広いくさび形をした葉がつく茎をもっているので,キセル全体として表現することが出来ないのである。
またこのラテン語の属名のCarpesium はえり首に巻くカラーを意味している。私達がヨーロッパの宮廷画でよく見るあの貴族達の首廻りを飾っているカラーである。こう見てくると,矢張り日本人と欧米人とでは感性のあり方が,少し違っているように思う。
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