野草とともに

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ゆきわりいちげ Annemone keiskeana

ゆきわりいちげ Annemone keiskeana ゆきわりいちげはきんぽうげ科に属する多 年草である。二月という月は山野草愛好家に とっては,まことに厳しいつきであるが,草 の中には,この酷寒の季節にもかかわらず, 可憐な花を咲かす奇特な草もある。
中でもせつぶんそう(Enanthis pinnatifida) は山野草愛好家の憧れの的で,私も御多分に もれず,一度は自然の中に花咲かすせつぶん そうを見たいと思い続けてきた。ところが, この自生地が,兵庫県の丹南町の奥にあると きき,半信半疑ながらも出掛けてみることに した。節分に咲くので節分草といわれているので,やや時期遅れかなと思いながらも,2 月の半ば過ぎに出掛けた。
確かに,教えられ たところにせつぶんそうの群落はあった。しかし雪も残っている,その斜面のせつぶん そうは開花には,まだ遠いという気配であっ た。残念と思いながら,この群落から,そん なに遠くないお社まで歩いたが,その境内の, まだ雪が残っている森陰に,偶然ゆきわりい ちげがひそやかに咲いているのを見付けて “雪割”が“節分”より早く花開くのを面白 く思ったのである。
この控えめな淡紫色の花 弁(実はがく片)や,昨年の秋に出てきて,厳しい雪の冬を過ごしてきた斑入りの葉をスケッチしながら,この草の素晴らしさに,だんだんとひき込まれていく自分を感じた。

いちげな一茎一華であり,いちげと名付けられている草は,はくさんいちげ(Annemone   narcissflora),あずまいちげ(A.radians),きくざきいちげ(A.pseudo-altatica)など,いずれもアネモネ属に属していて,派手やかさはないけれども,それぞれ白色から,淡紫色の,形の美しい花を,茎の頂きにつけ,見る人の心に泌み込む名花ばかりである。
ゆきわりいちげの種名の keiskeana は“圭介の”という意味で,植物学者伊藤圭介に因んだ命名である。
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