野草とともに
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まつむしそう Scabiosa japonica マツムシソウ科 Dipsacaceae
晩夏から初秋にかけて高原に咲く花の中で まつむしそうは私のもっとも好きな花の一つ である。
このまつむしそうの名前の由来につ いてはいろいろなことがいわれているが,わ たしにはマツムシがチンチロリンと鳴きはじ め頃,この花が盛りを迎えるからだというの が一番好もしく思える。
もう20年も前にな るが,毎年のようにゼミの学生達と,信州の 清里の清泉寮で,午前中は外国文献の輪読をし,午後は高原歩きをするという優雅な数日 を過ごしていたが,その時,清泉寮のまわり のあちこちの広場でまつむしそうの群落があり,私も簡単なスケッチをしておいた。
しかし,それは私自身余り気に入らなくて,何時かしっかりと描いてみたいと思い続けてきた。
そのうち信州へも行かなくなり,こんど出会 えたらという思いが強くなればなるほど,不思議と出会えないものである。そのうち私も 定年を迎え,時間的にも余裕ができ,ついにまつむしそうに出会うことができた。 1993年10月9日,比良に秋の草花の探 索に出掛けたとき,八雲ヶ原湿原の横のヒュッテやリフト乗り場のある広場に接して,まつ むしそうの群落があり,そこにはせんぶりや いぬせんぶりやわれもこうなどもあり,まつむしそうがぬきんでて立派で,再会に心のときめきを覚えるほどであった。
その時に描いたのがこれであるが,本当に気品のある名花である。
ところでこの属名の Scabiosa(スカビオサ)というのは,疥癬という意味で,昔ヨーロッパでこれが疥癬治療に使われたことから,その属名になったという。
この属名がまつむしそうのイメージを傷つけないことを望むものである。
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