野草とともに
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せつぶんそう Eranthis Pinnatifida キンポウゲ科 Ranunculaceae
ここ数年,三月の初めにせつぶんそうを見 に出かけることにしている。丹波篠山の奥の 丹南町,大山宮下に自生地があり,地区の人達によって,大切に保護されている。
今年(1995)は1月17日,淡路,神戸 を中心に大地震があり,大変な被害が出たが, 私の住んでいる宝塚でも家屋が倒壊し,死者 87人という被害を受けた。
私のところは, 建物の被害は比較的軽微であったが,それでも水,ガスが2月7日迄とまり,その間には 寒風の中飲料水を貰う行列に加わり,難民の 気持ちも味わった。このような中で,山野草を見に行く気持ちなどには,なかなかなれな いのではないかと思う日々であった。
ところ が,私の属している山野草観察の会から,3 月7日にせつぶんそうを見に行くという案内 がきて,思い切って出かけることにした。 JR篠山口から柏原行きのバスで約20分, 大山宮下で下車した。
この付近は全く,地震の被害もなく,のん びりした農村風景の中,その自生地に,せつ ぶんそうが何時ものように優雅に咲きそろっ ていた。この辺りは雨が多いところで,この 日もよくしぐれた。
せつぶんそうの属名のEranthisはギリシャ語で,Er=早春,anthis=anthos=花で,早春の花をあらわしている。
ところがドイツ語ではWinterlingで,こちらは“冬の花”である。日本では節分は立春の前日であるから早春の花である。
そういえば,緯度の高いドイツでは春の訪れが随分,遅かったことを思い出す。この日はせつぶんそうの自生地に隣接したあずまいちげの群落では,ほとんどが白い鳥帽子のような蕾であった。近くの追手神社の境内ではゆきわりいちげを二輪だけ,また近くの山裾ではせりばおうれんの可憐な白い花の群落が,又,農家の軒先にふくじゅそう,畠の畔道には,おおいぬのふぐりやふきのとうなどが見られて,確実に春近しが感じられ,震災に打ちのめされた心に安らぎと希望が与えられた。
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